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ホーム > リベラル読解論述研究 > 生徒優秀答案・講師解答例 > 加藤尚武『脳死・クローン・遺伝子治療』講師解答例

加藤尚武『脳死・クローン・遺伝子治療』
講師解答例

2014年11月19日 掲載

リベラル読解研究

加藤尚武『脳死・クローン・遺伝子治療』について

リベラル読解研究では『脳死・クローン・遺伝子治療 —バイオエシックスの練習問題—』(PHP研究所)を扱いました。今回は生命倫理について考えます。

医療の現場では答えが一つに決まらないような難しい問題に直面することがしばしばです。この本で取り上げられる一つひとつの問題は、医療技術の発展とともに新たに生まれたものです。

これからの生命科学はどうあるべきか、医療に必要な倫理とはどのようなものか。このようなテーマで討論しました。医学部入試のみならず、東京大学後期試験総合科目などでも出題された「自己決定権」についても学びました。

課題

現代は医療行為を選択する際、「他人に危害を加えない限り公共機関などの他者から制約を受けない」(12ページ)というかつての原則では、解決できない事例が増加している。この一例として、平成25年4月より日本において新型出生前診断が始まった。

血液を調べるだけでダウン症などの染色体異常が高確率でわかり、羊水検査と比べて低リスクで手軽な診断と言えるため、実施開始1年間で7775人が受診した。背景には、高齢出産の増加に伴いダウン症などの発症率が高くなったことがあり、診断も対象者を一定年齢以上の妊婦に限定している。しかし賛成・反対ともに様々な意見があり、課題も多く残されている。

では、書籍で学んできた生命倫理学の見地に立ったとき、この問題にどう向き合っていくべきだろうか、600〜1000字で考察せよ。

講師解答例

  • 解答例1
  • 解答例2

講師解答例 ①

書籍では不妊治療の正当な条件が8つ提示された。従来の倫理では決定できない問題である不妊治療に対して、生命倫理学がこれまで培ってきたものだ。その条件のうち出生前診断とそれに伴う選択的人工妊娠中絶に大きくかかわるものは、「医療技術の便宜的利用ではなく救済型治療である」「優生主義とならない」「出生の人為的操作の可能性を不要に拡大しない」の3点であるので、一つずつ検討していく。まず便宜的利用と救済型治療の線引きは大変困難であり、今回の問題もどちらと明言は難しい。これ以外の観点で許容範囲内だと認められたとき、救済型治療と見なすことになるだろう。次に、母体の健康上の理由ではなく胎児の性別や医学的理由で堕胎をするのはまさに優生主義であり、結果的にダウン症をもつ者に対する差別が広がる可能性がある。三つ目に、これが拡大して様々な選択的人工妊娠中絶が行われていく可能性があるので、人為的操作拡大の可能性も高い。これらから考えると新型出生前診断は許しがたいものである。

しかし、果たしてこれらの条件だけで決定づけて禁止してもよいだろうか。生命倫理学を考えるときに忘れてはならないのは、背景となる社会状況である。もちろん、社会状況に応じて恣意的に生命が扱われるようになってはならない。ナチスによるユダヤ人の絶滅計画・障害者の安楽死のようなことはけして許されない。しかしこの件については、そのような政策をとったナチスという政党を否定すべきだ。これに対して現代日本の社会状況はナチスとは逆に、女性の社会進出が進み、平等と個人の権利が推進されている。あまりに急速な変化により社会体制が追い付いていない部分は多いが、それでも良い方向に進んでいると言えるだろう。新型出生前診断はこの社会状況が引き起こしたものであり、一概に否定することもできない。

女性の社会進出が進み高齢出産が増える状況下では、出生前診断を受診する人数は増えていく一方である。ここでとるべきは、若いうちに女性が出産に踏み切ることができるような社会制度を整えていくことである。新型出生前診断もそれに伴う選択的人工妊娠中絶も、生命倫理的には認めづらいものである。しかし圧倒的な数の、それを望む女性の権利も否定はできない。それらを勘案し、「新型出生前診断にかかわる生命倫理的問題」として、女性が若いうちに出産と社会進出を両立できる社会制度を構築していくべきである。

(東大館授業担当)

講師解答例 ②

胎児の権利能力はいつから認められるのか。民法では、権利または義務の主体となるために必要な資格である権利能力は、通常出生によって全ての人が取得するとされている。ここで言う「人」とは母体から一部でも露出していることを指す。それは胎児が一部でも露出していれば、胎児のみを攻撃の対象とすることが可能になるため保護すべき必要性が生じることに拠るものだ。したがって、母親の体内で成長過程にある胎児は出生していないため、原則としては権利能力がないと言うことができる。

では、法的に胎児の権利能力が認められないからと言って、出生前診断によって意志決定が不可能な胎児の生命を大人が選別することに対して何のためらいも感じないかというとそうではない。なぜかと言うと、本書で筆者が「死」とは見えない実体だと言っていたが、同様に「生」もまた明確な定義づけが非常に困難な概念だからである。

だが私個人としては、出生前診断そのものには賛成だ。それは「中絶に賛成か反対か」とは別の話である。出生前診断で陽性と判断された場合でも、親が中絶を選択するとは限らない。それはあくまで選択肢の一つにすぎない。もしかすると、あらかじめダウン症児の可能性があると分かれば、その病気について家族で真剣に考え、覚悟を決めるための準備期間ができるかも知れない。そう考えれば「考える時間をもらう」というのは、出産する立場の人が持つ権利として必ずしも否定されるべきだとは言えないだろう。

それでもやはり、自分がそのような状況に直面したとき、どのような結論を出すかは分からない。だから当事者でない第三者がいくら「自分は中絶なんて絶対にしない」「陽性と診断されても間違いなく出産に踏み切る」と宣言したところで、何の説得力もないことは明白である。出生前診断とそれによる中絶が是か非かという議論が、いつまでたっても進展しないのはそういうわけだ。

今回、新型出生前診断が始まったことにより、以前と比べて手軽で安全に診断を受けることができるようになった。もはや人間にできないことはなくなる時代が本当に来るのではないかという錯覚さえ覚えてしまう。ならばいつの日か、診断によって判明した遺伝子の異常すらも治療で治すことができるようになることを願うばかりである。

(教材作成課)

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