第21回 東大入試プレ問題分析〈英語・問題1〉

東大研究室

今回より東大入試プレ問題を掲載します。初回は英語の要約問題です。
東大入試プレ問題にチャレンジしてみましょう。

英語

問題1. 次の英文の内容を、70〜80字の日本語に要約せよ。句読点も字数に含める。

Thanks to the ubiquity of text on the Internet, not to mention the popularity of text-messaging on cell phones, we may well be reading more today than we did in the 1970s or 1980s, when television was our medium of choice. But it’s a different kind of reading, and behind it lies a different kind of thinking perhaps even a new sense of the self. “We are not only what we read,” says Maryanne Wolf, a developmental psychologist at Tufts University. “We are how we read.” Wolf thinks that the style of reading promoted by the Net, a style that puts “efficiency” and “immediacy” above all else, may change the way we perceive things that emerged when an earlier technology, the printing press, made long and complex works of prose commonplace.

Reading, explains Wolf, is not an instinctive skill for human beings. It’s not etched into our genes the way speech is. We have to teach our minds how to translate the symbolic characters we see into the language we understand. And the media or other technologies we use in learning and practicing the craft of reading play an important part in shaping the neural circuits inside our brains. Experiments demonstrate that readers of ideograms, such as the Chinese, develop a mental circuitry for reading that is very different from the circuitry found in those of us whose written language employs an alphabet. The variations extend across many regions of the brain, including those that govern such essential cognitive functions as memory and the interpretation of visual and auditory stimuli. We can expect that the circuits woven by our use of the Net will be different from those woven by our reading of books and other printed works.

〔注〕immediacy「即時性」 neural circuit「神経回路」 ideogram「表意文字」 cognitive function「認知機能」

解答例と解説を表示

解答例と解説

解答例

ものを読む際の媒体は大脳の神経回路形成に大きな影響を与えるので、インターネットによる効率性・即時性最優先の読書は我々の認知方法に変化を引き起こす可能性がある。(79字)

(別解)
ネット時代の効率的・即時的な読書の普及により、従来の活字読書によってできるのとは異なった神経回路が形成され、私たちの認知機能に変化が生じるかもしれない。(76字)

解 説

東大のお家芸とも言うべき要約問題である。読書を語る場合、何を読むか——小説か、哲学書か、新聞か——ということが問題になるのが常である。しかし、本文は、読書の際の手段・方法を問題にし、「読書手段・方法は神経回路形成に影響を与え、ひいては認知機能に広く作用を及ぼす」と発達心理学の知識を援用して述べている。

そして、この前提から、「インターネットによる効率性・即時性優先の読書は、私たちの認知機能に大きな変化を生じさせるかもしれない」と結論付けている。

最初のパラグラフで大きく抽象的に意見を展開し、次のパラグラフで具体的に理由を説明するという構造に注意して内容を整理すると、次のようになる。

① どう読むか、何で読むかということが神経回路形成に、ひいては認知機能に影響を与える。

② 印刷機のおかげで、長い散文(要するに普通の本や新聞などの印刷物のこと)が普及した。

③ 活字印刷物を読むことで、それに合った神経回路が形成され、認知方法[ものの感じ方・見方]を私たちは身に付けた。

④ インターネットを利用してものを読む経験は効率的・即時的であって、従来の活字時代とは異なった認知方法が生じるのではないか。

本文の要約を作る際、一番短縮すれば第1パラグラフの内容、すなわち上記の④だけになる。

しかし、それでは第2パラグラフがある意味がなくなってしまうし、なぜ認知方法に変化が生じるのかの説明がなく、意味不明の文になってしまう。そのために、①はぜひ含めたいポイントである。②、③は付帯情報とでも言うべきもので、含める必要はなく、また、字数の都合上その余裕もない。

言い換えると、上記①、④の内容を自分の言葉で制限字数内にまとめることになる。

なお、「読書」という言葉は、本来的には「本を読むこと」だから、インターネット[オンライン]に使うのはおかしいことになる。しかし、それに代わる言葉が日本語にないため、「読書」を広く使うのはやむをえないだろう。

「Y-SAPIX Journal 2011 AUTUMN」より転載

次回は、「東大入試プレ問題分析〈数学・問題〉」を掲載予定です。

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