東大の「進学振り分け制度」とは?
進学振り分け制度の趣旨は、リベラル・アーツ教育の重視である。前期課程2年間で幅広い教養を身につけ、後期課程の専門教育に必要な基礎的な知識を学ぶことである。そういった教養のバックボーンのない専門教育は単なる技術教育になりやすく、たやすく古びてしまうという考え方による。
- 前期課程の各科類と、通常の進学先となる後期課程の学部の対応関係
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科類 後期課程の学部 文科一類 法・教養 文科二類 経済・教養 文科三類 文・教育・教養 理科一類 工・理・薬・農*・医*・教養
※理科一類から進学できるのは、農は獣医学科以外、医は医学科以外。理科二類 農・薬・理・工・医・教養 理科三類 医(医学科)
上の表が通常の進学ルートであるが、2006年度新入生から、すべての科類からどの学部にも進学できる「全科類進学枠」が設定されている。
前期課程では、外国語、必修、準必修、総合科目などのカテゴリー別に最低限取るべき単位数が決まっており、点数が高い科目から進学振り分けの点数に反映されていく。
規定の科目数を超えて履修した分も重率0.1として算定されるので、安易に多めに履修登録して、不要なものを切っていくという戦略は採りにくい。逆に、ある科目で悪い点数を取ってしまっても規定単位数の外に押し出してしまえば、重率は0.1なので平均点に対する影響は小さくすることができる。
文理問わず、人気学部の最低点は100点満点中の80点台後半になることが多い。人気学部への進学には、点数の塗り替えがきかない外国語で高得点を取ることが肝要である。
進学振り分けの利点は、前期課程で文系・理系の枠にとらわれることなく学ぶことで視野が広がり、物事を多角的に見ることができるところである。
例えば、環境問題に対しては、科学的な見方と社会・経済的な見方があるので、その両方を身に着けられることは将来にわたって有利である。また、大学に入ってから本当に自分のやりたい学問領域を探せるので、受験の時点で思い描いていたことと大学で学ぶ内容が違った、というミス・マッチが防げる。
さらに、大学入学後は学習意欲が失われがちだが、進学振り分け制度があるため努力し続けることから得られるものは大きい。
東大生の「進学振り分け」体験記
- 進 路 理科一類→工学部化学システムエ学科
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今は化学を専攻していますが、実は高校まで化学が大嫌いでした。では、なぜ嫌いだった化学を選んだか?それは高校では分からなかったことを、大学の化学が説明してくれたからです。意味の分からないまま覚えた事の裏にあった理由が分かって、化学が楽しくなったのです。
しかし一口に化学と言っても、様々な学部・学科がありました。そこで私は、理論の探求よりは社会に貢献する技術を学びたいこと、対象をミクロとマクロ双方の視点から見たいことなどから、現在の学科を選びました。
実際に大学に入ってみるまで、どこの学部で何をやっているかはわからないですし、もしかしたら、やりたいことが変わるかもしれません。そういう意味で、進学振り分けは良い制度だと思います。
- 進 路 文科二類→経済学部金融学科
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東大受験時は、就職や自分の興味などを考慮して経済学部一択でしたので、経済学部に最も進みやすい文科二類を選びました。
近年、経済学部の人気は高まっていて、文二の学生でもある程度の成績をとらないと経済学部に進学できない状況になっています。そのため、成績を確保することは常に意識していました。むしろ学部の中の学科選択に悩むところでした。
日本には金融学科がある大学が3校ほどしかなく、また世界的に見て弱い分野です。東大の金融学科はこのような状況を踏まえ2007年に新設されました。数学が得意科目であることもあり、金融学は僕にとってチャレンジしたいものに思えたのです。
SAPIX YOZEMI GROUP「2011 spring東大合格プロジェクト」より転載
次回は、「主な理系学部・研究科の特徴」を掲載予定です。