梅田望夫/飯吉透『ウェブで学ぶ』講師解答例

リベラル読解研究

梅田望夫/飯吉透『ウェブで学ぶ』について

リベラル読解研究では『ウェブで学ぶ —オープンエデュケーションと知の革命—』(筑摩書房)を扱いました。今回は「ウェブ社会の未来」について考えます。情報がすぐに陳腐化していく時代に、ウェブは「未来を切り開いていくための道具」になり、オープンエデュケーションは知の革命を起こすと著者は言います。

ウェブの可能性は無限に広がっています。第4講では、「教育以外」のウェブのオープン化という、いつもと違った切り口で小論文を書きました。

課題
本書の内容を踏まえ、今後、教育以外の何らかの分野をウェブによって「オープン」にしていく取り組みを考え、600〜1000字で論じなさい。

講師解答例

講師解答例 ①

私は、金融の分野を「オープン化」することで、特に貧困層を経済的に支援し、商業活動を世界規模で活性化させたいと考える。近年、インターネットの浸透によって金融サービスは大きく変化してきた。だがそのシステムにはまだ問題も多く、画期的な取り組みとして世界中に流通するには改善の余地があると言える。

その一つの例として「マイクロクレジット」が挙げられる。マイクロクレジットとは、発展途上国における低所得層の貧困緩和を目的とする「小規模融資」であり、援助に変わる効果的な手段として期待されてきた。こうして貧困層の人々に金融へのアクセスを与えられるマイクロクレジットだが、その認知度は決して高くなく、また管理が行き届かず返済率の低下も問題となっている。しかし、ウェブを活用してこのマイクロクレジットを行うことは、より多くの世界中の個人の貸し手とより多くの貧困層の借り手を結びつけるきっかけとなる。さらに、プライベートの金融機関と比較して監視が甘くなりがちな部分をウェブで管理することで、返済率の低下にも対応できるだろう。そして、単なる慈善事業としてではなく互いにビジネスの視点を持つことは、発展途上国の経済的な成長を助けるだけでなく、融資した側にとっても新たな市場を開拓することに繋がるはずである。

ただしいかなる分野においても、それがウェブによって「オープン化」される場合、そこにはインターネットが使用できる環境が整っているという前提がある。都会から遠く離れた農村部、母子世帯や老人などの最貧困層に属する人々さえも平等にサービスを受けられるためには、インフラ整備が最低条件となることを常に念頭に置いておかなければならない。それだけではない。「オープンエデュケーション」と同様に、この例についてもやはり必要なのは「経済的に自立したい」という自助力と「豊かな金融サービスを提供したい」という互助力である。つまり「オープン化」と「自助力と互助力」は切っても切れない関係にあり、それこそが本書で述べられていたように「世界をより良い場所にするための原動力」になるための最大の要素であるだろう。

(教材作成課)

講師解答例 ②

ウェブによってオープン化するべきものとして、以下の特徴を持つことがあげられる。まずは、それを求めている人はたくさんいるが、経済的な問題や地理的な問題などで手に入れることが難しいものだ。オープン化によって社会全体の利益につながればなお望ましい。次に、オープン化に際して権利の問題が発生しづらいものがよいだろう。オープンにすることで競争が促進され質の向上が起こればさらによい。これらの条件から私は「医療」、正確に言えば「医療・健康に関する情報」をあげる。

現在の日本国内の状況を考えると、自分に適当な医療は何か、それはどこに行けば受けられるのかの情報を求める声はあるが、既にある病院検索サイトなどは情報が乏しく使いやすいものとはいえない。質問に医師が答えてくれるサイトもあるようだが、有料のものばかりである。ここで、あくまできちんと病院にかからせることを目的に適当な医療情報を提示してくれるシステムがあれば、病院側としても効率が上がるだろうし、そうして受診する側に選択されることで競争が促進され質の向上にもつながるだろう。また、栄養管理をしたいが自分一人では上手くいかない、健康を維持するため運動に関心はあるがジムに行く時間やお金がないなどの場合も、ウェブ上で適当な運動方法を教示したり、データの管理までできるシステムがあれば便利だ。

次に、現在、医療水準は国によって大きな格差がある。発展途上国においてワクチンが不足している例や、衛生面などの知識のなさゆえに病気になってしまう例を耳にする。途上国においてはネットワーク環境が整っていないため一人ひとりが情報を得ることは難しいが、共同体ごとの代表者が情報を得ることで、その共同体の健康を少しでも守ることに役立てられないだろうか。あるいは最低限の医療も整っていない地域からウェブで呼びかけ、ボランティアを要請したり、ワクチンへの募金を求めたりする媒介として機能させる。先進国でこのシステムを使っている人が少額の利用料を払い、それが募金へと回されるような仕組みを作れば、地域ごと、国ごとの医療格差を埋めることにも役立つのではないだろうか。

(東大館授業担当)

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