【連載】2013年2月 中学生へのメッセージ

寒い時期がまだまだ続きます。体調管理には十分気をつけましょう。

iPS細胞

タイミングを逸してしまい、この欄で取り上げられなかったのですが、ここ数日で関連するニュースが飛び込んできました。

髪の毛の再生に光り?

まだ、マウス実験の段階ですが、慶應義塾大学医学部でiPS細胞から髪の毛を作る組織の部分的な再生に成功したそうです。「髪は女の命」と言われ、女性の髪型へのこだわりは強いものですが、実際、「髪」そのものへの悩みを持つのは男性なのかも知れません。

もし、手軽に再生が可能になると長い間、人類(?)が苦しんできた「老い」の象徴の一つがなくなり、外見コンプレックスから解放されることは朗報といえるでしょう(中学生である諸君からするとどうでもよい問題かもしれませんが、切実な悩みとしている大人は思ったより多いものです)。

山中教授がiPS細胞の作成を開始

iPS細胞の発見者でもある山中伸弥教授が2013年2月より始めるそうです。山中教授が所長を務める京大iPS細胞研究所では「iPS細胞ストック」の構築を計画していて、その実現に向けた第一歩となります。

iPS細胞は本来、一人ひとりの細胞から作成すれば、拒絶反応が起こらないのですが、作成には高額の費用がかかります。そこで、他人に移植しても拒絶反応が起きにくいiPS細胞を複数作成し、冷凍保存して、今後の医療にいかす方針だそうです。75種類の型がそろうとなんと日本人の約80%に対応できるようになるそうです。これまで他人からの臓器移植に頼らざるを得なかった疾病を持つ人にとって、この分野の進歩は命にかかわる大切なことです。

もちろん、実際の医療現場で利用されるまではさまざまな問題点が出てくるでしょうが、ぜひ、迅速に完成させてほしい技術の一つといえるでしょう。

そもそもiPS細胞とは?

細胞は分裂と分化という段階を持っていて、分裂によって数を増やす段階と分化によってさまざまな特徴を発揮する変化の段階に分けられます。細胞が分裂するとDNAもコピーされますが、分裂の度に端の方がコピーされなくなり、DNAがだんだん短くなっていき、ある程度の回数以上は分裂できなくなります。子供が大人になると成長が止まるように細胞もそれ以上成長しなくなります。幹細胞は端までコピーできる特別な装置を持った細胞なので何度でも自己複製が可能なのです。それは子供に成長を促すような細胞です。また、新陳代謝で細胞が入れ替わる時の供給源となる細胞も、分化の範囲は限定されますが、何度も自己複製できます。しかし、幹細胞も徐々に衰えていき、再生ができなくなっていきます。

再生ができない細胞でできた器官を復活させるためにはどうすればよいでしょうか。体内に何らかの方法で幹細胞を取り入れたり、幹細胞を分裂させて臓器を作り体内に移植すればよいのです。では人間の幹細胞はどこにあるかというと着床前の受精卵にあります。その中から全てのもとになる幹細胞を取り出し、多能性を持たせたまま培養して増やしていけばよいのです。これをES細胞と言います。もう一つの方法は分化した細胞を取り出し、そこに外から遺伝子を導入したり薬を加えることで細胞の多能性を再び獲得させる方法があります。これがiPS細胞の仕組みなのです。

iPS細胞の未来性

iPS細胞よりもES細胞の方が先に技術としては作られていましたが、問題がありました。それはES細胞を作るためには受精卵を犠牲にしなければならないということです。つまり、尊い命を犠牲にすることが、たとえ受精卵の状態であったとしても倫理的に許されるかという問題です。iPS細胞は原則自分の細胞を利用するために一つの大きな問題がクリアできるのです。そして、現実味を帯びた段階になったからこそ、山中教授のグループが行うようなアイディアが生まれてきたのでしょう。深刻な命に関わる問題から、命には直接関係しないけれど長年の「悩み」まで、さまざまな身体にまつわる問題を解決してくれるiPS細胞は偉大な発見と言えるのです。

技術の進歩は問題を克服すること

かつてのドラえもんの歌は「あんなこといいな、できたらいいな……」で始まっていました。皆が望むことを実現させるためには理論を構築し、技術的に実現を可能にする必要があります。でも、すぐに理想にたどり着くかと言えば、それまでには長い時間が必要な場合がとても多いのです。その時々の段階で考えられる最高の理論・技術を世に知らせていくことはとても大切なことです。ES細胞があったからこそiPS細胞が生み出されたのです。そういえば、フィットカットカーブというはさみを知っていますか?このはさみなどは常識を疑ったからこそ出てきた画期的な道具と言えるのではないでしょうか?

夢をビジョンに2013

Y-SAPIXでは来る2月17日に中高一貫校生を対象としたフェアを行います。新中1生に向けて有意義な中高生活を送るアドバイスをするイベントになっていますが、校内生の皆さんの参加も大歓迎します。特に国際的に活躍する方々の講演は皆さんにも役に立つと思います。ぜひ、覗いてみてください。

お問い合わせ: 0120-3759-37 (日曜・祝日を除く14:00〜18:00) Webフォームで問い合わせる