【連載】2012年5月 中学生へのメッセージ

リベラル読解研究の目標

リベラルアーツについては昨今、さまざまな場面で取り上げられ、大学によっては学部名に冠しているケースも散見されるようになりました。「人を自由にする学問」、「自由人の諸技術」、「自由七科」……その内容に関してはさまざまな表現がなされています。

そのさまざまな理解を踏まえてY-SAPIXが考えるリベラル読解研究の教育目標とは、

  • 「自ら思考した結果を正確に表現する力を身につける」

ということです。

もうすこし具体的にすると以下のようになります。

①情報・概念・理論のインプット

これは学問的な定義や用語の意味・用法などを学ぶことです。Y-SAPIXでは文系・理系問わず、多くの学問分野を紹介し、その分野の中から書籍を選び、読んでもらうところから、学習をスタートしています。客観的事実に基づいた論理的な文章を多く読みこなすことにより、知識分野を広げ、教養を身につける原点としています。

それに加え、古典の素養も同時に磨いていきます。学習は常に未来を指向する傾向が強いものです。しかし、「温故知新」という言葉もあるように、過去から学ぶべきことは山ほどあります。ただし、過去に固執するわけではありません。迎えるべき未来をよりよいものにするために先人の英知を学ぶのです。

そして、直接、先人の英知に触れるためには古典の学習を外すわけにはいきません。
歴史的に見ると、漢文の素養は江戸だけでなく、明治の知識人にとっても、当然身についているべき分野でした。森鷗外は医学の道に進みましたが、幼少期に最初に学んだのは漢文です。夏目漱石も本当は英文学ではなく漢学を学びたかったようです。

明治期に西欧の概念が夥しく日本に流入してきたとき、漢学の素養が新たな概念理解の手助けになったことは有名です。自身がもちうる言語表現をフルに活用して、西欧の抽象概念を日本に導入したのです。

中学になってから学習が始まる古典学習を通して、表現の幅を拡げることは大変重要だとY-SAPIXでは考えています。
「あの子ヤバくない?」という表現より「栴檀は双葉より芳しだねえ」の方がエスプリ(知性・才気)を感じませんか?
ちなみにリベラルアーツを翻訳したのは明治の思想家である西周で「藝術」と訳したそうです。

②理解した内容の思考・考察

これは論理的思考力を磨く学習になります。理解した概念を基に論理展開した場合、それは果たして有用な概念として認められるかどうかについて考察していきます。書籍には毎週対応するテキストが用意されており、文章内容を踏まえて、思考を鍛える問題が、並んでいます。

一例を挙げましょう。中2の4月の書籍は香山リカさんの『いい子じゃなきゃいけないの?』でした。その中ではかつて「いい子」だけを社会は求めていたわけではない。現在でも「反抗期」はあってしかるべきと考えている人が8割以上いるにもかかわらず、反抗期が遅れていたり、ないまま過ぎてしまう例も散見されていることが書かれています。

そもそも「いい子」とは何かということを文章をまとめるだけでなく、生徒の皆さんと考えました。
さらに尾崎豊の「卒業」という歌に関して、共感する中高生が減っているという事実が書かれていることに触れました。作者はそれに驚きを持っているのですが、生徒の皆さんの反応は文章の記述に近いものでした。

リベラル読解の特徴は「どのように考えても構わない」ということでもあります。ポイントは客観的・論理的思考を経た結論であることのみです。
場合によっては例のように否定的な回答が導かれることもあります。その場合にも「なぜ」そのような意見になるのかを客観的に考える習慣を身につけていきます。

さらに主観と客観の違いにも言及していきたいと思います。論理的思考には理由がつきますが、直観的な判断や感覚的な判断には理由はつきません。このこともしっかり理解していないと「理由のための理由」を考える悪しき習慣が身についてしまいます。

③意見のアウトプット

ここでは二つの方法を用いて力を磨いていきます。

まず、一つ目は「討論」です。内にある思考の結果を伝える方法として、ディスカッションをする力はきわめて重要な力です。ここでもポイントになるのは「客観的論理性」です。

日本における討論はややもすると「声の大きさ」や「迫力」によって流れが決まってしまうことが多々あります。しかし、それは「討論」ではありません。
「討」には「たずねる、しらべる」という意味もあります。
思考の結果をさまざまな面から「検討」し、その「客観的論理性」の高さを明確にしていきます。

二つ目は文章作成の技術を磨きます。Y-SAPIXではこちらも大変重視している過程です。学んだ表現は「使え」なければ、意味がありません。また、古来からの構成である「起承転結」に関しても発展的な構成が提唱されるようになっています。

個人的な力量に問われない、定型表現を身につけることで、形式に振り回されることなく、内容重視の文章作成が可能になります。

最初はなかなか思い通りには行かないかも知れません。しかし、「継続は力なり」です。
中高6年間という長い時間があるからこそ、磨ける力があります。
Y-SAPIXでの6年間を通して、揺るぎない思考力・表現力を身につけましょう。

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