【連載】2014年3月 中学生へのメッセージ

前期2次試験開始

去る2月25日から、国公立大学の前期2次試験がスタートしました。各大学で出題された問題が続々と判明しています。今回は東京大学の国語・第1問に関してお話しします。

東京大学の国語

例年、東大の国語は文科が4題構成、理科が3題構成で、第1問 現代文評論 第2問 古文 第3問 漢文 となっており、理科はここまでの3題、文科は第4問に現代文がもう一問出題されています。

2014年度 第1問

今年の第1問は藤山直樹さんの『落語の国の精神分析』が出題されました。落語家と精神分析家の仕事を比較した文章です。具体的な内容に関しては下記のURLからご覧いただくとして、要点をまとめると双方の仕事の難しさと難度が高いからこそ充実した仕事であることが述べられています。

もう少し具体的に説明すると、不特定多数の聴衆に対して満足感を与える困難さと、安くはない料金を支払い分析に訪れる、どこかしらに心の病を抱える患者に対し、1対1で満足感を与える困難さが共通すること。さらに一人で多数の人間を演じ分ける落語家の自我の分裂と想定しきれない相談によって精神分析家が体験する自我の分裂についても言及しています。

入試に頻出のテーマに関する文章に慣れた受験生にとって、落語家の仕事や心理状況を想像する文章にいささか面を食らったのではないでしょうか。

東大の2次試験はほぼ記述問題が出題されます。特徴としては解答欄の「短さ」が挙げられます。1行35字程度の解答欄が2行ないし3行で答える必要があります。記述問題は大別すると「内容説明」と「理由説明」の2パターンがあり、第1問は漢字問題を除き、全て「内容説明」のみの出題でした。

ここまで書くと皆さんは「本文の内容を使ってまとめればいいのだろう」と思うでしょう。もちろん、正解です。また、文章が殊更、難解なのかと思われるかもしれませんが、問題に触れた皆さん、どうですか。全く歯が立たないことはないですよね。しからば、どこに東大国語の難しさがあるのかといえば、解答欄なのです。

東大の入試問題は「簡潔」に解答をまとめる力を要求します。実際、かなり内容を大胆にまとめないと解答欄に入りきらないのです。つまり、「要約力」「表現力」が問われるのです。とかく、「説明する」というと、多くの言葉を費やして行うものだと思いがちですが、深く理解していれば短く簡潔にまとめられる、という出題意図が感じられます。

文章構成が分かりやすく対比で書かれているため、実際には一度も落語を聞いたことがなくても、また精神カウンセリングを受けたことがなくても答えをまとめることはできます。学年を問わず、ぜひ、一度トライしてみましょう。

» 2014年 東京大学 前期 入試問題と解答例(代々木ゼミナールのホームページへジャンプします。)

落語の起源

江戸時代に始まったと言われる落語ですが、イメージとしては聴衆が爆笑しているイメージが強いかもしれませんね。幼い頃に『寿限無』に出てくる長い名前を暗記した覚えのある人もいるかもしれません。実際、寄席や落語会では笑える噺だけではなく、人情話と呼ばれるあまり笑いがなく、どちらかというと感動させる話や夏になると怪談話などもよく演じられます。江戸時代から語られている「古典」ばかりかというとそれぞれの時代で「新作」が作られ、そのため「明治」や「大正」の作品も既に古典として扱われています。そして「新作」と呼ばれる舞台が現代の落語も数多く演じられています。

落語は、一説によれば、そもそも寺院で行われる説教・説法がその起源とも言われています。落語の座って話す形式は本堂で一段高くした台で僧侶が語っている様子と似ています。また、江戸落語における噺家の階級である「前座」「二つ目」などいう呼称は仏教にまつわる言葉が元になっているようです。民衆を救う話はいわゆる「説教」くさくなるものですから、笑いを含んだ話をしたのかもしれません(奈良の薬師寺のお坊さんは気さくでお寺の説明もおもしろおかしく話してくださいます)。

噺家の芸に触れる

落語も、能や狂言、歌舞伎のように伝統芸能の一つに挙げてよいと思います。先に取りあげた問題文にもありましたが、ほかの芸と大きく異なるのは上半身のみで演じることと一人で多くの人間を演じ分けることが挙げられます。男性(それもたいていは坊主頭)が化粧することなく老婆も若い女性も見事に演じ、次の瞬間には悪童や殿様も演じるという多彩さがあります。

それだけでなく、江戸の人々の思考や嗜好、現代に残る言葉の語源まで、さまざまな知識が得られるという学習上の利点もあります。たとえば、武士と町人ではどのような意識の違いがあるのかや、今は主流である恋愛結婚が、当時はお見合い結婚に比べて低く見られていたなど、現代との意識の違いを理解することができます。

そして、落語の最大の楽しみは、クラシック音楽が同じ楽曲でも指揮者が異なると曲調も異なるのと同じように噺家のアレンジや力量によって同じ噺が全く異なる印象になってしまうことです。また、聞き手が一度おもしろいと感じた噺を繰り返し聞いてもずっとおもしろいと思い続けられることです。これこそ本物の芸といえるでしょう。

ネット社会である現代ではとても手軽に落語について知ることができます。少し興味を持った人はぜひ、検索してみてください。新しい話術の世界に触れることができるでしょう。

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