【連載】2014年1月 中学生へのメッセージ

あけましておめでとうございます。今年が皆さんにとってよい年でありますように。

未来型コンクリート

新年を迎え、皆さんにまず、何を伝えようかと考えた結果、今回はコンクリートを取り上げることにしました。ここでいきなり質問です。コンクリートの建造物はいつ頃から建てられているか知っていますか?

日本でのコンクリートの歴史は、約100年しかありませんが、世界的に見ると実はローマ時代までさかのぼることができます。有名なコロセウムなどは、今の材質とは異なりますが、コンクリートでできています。火山灰を主成分としていて、鉄筋を使用しなかったため、強度は今のものより高かったようです。

現在のコンクリートは砂や砂利、セメントと水を混ぜて作ります。コンクリートは非常に強度が高く、高層ビルやダムなど巨大建築物に使用されています。現代社会において、都市形成には欠かせないものなのですが、その強度が劣化することが問題になっています。コンクリートの成分はアルカリ性です。そこに弱酸性の雨が降ると表面が酸化し、元の成分と中和を起こし、強度が落ちてしまいます。そのためコンクリートの耐久年数は50年ほどと言われており、現在、高度経済成長期もしくは前回の東京五輪の際に突貫工事で作った建造物の耐久性、耐震性が危ぶまれ、各地で補強工事を行っている様子が見られます。材料の配合により強度が変わるため劣化による事故なども耳にするようになりました。
 
また、東日本大震災の津波で三陸沿岸のコンクリート製の防波堤が壊滅的な打撃を受け、そのがれきの処理が遅々として進みません。

このような状況の中、コンクリートに新たな方向性を見いだせる可能性が高まっています。それをここでは2つ紹介したいと思います。

一つ目は、コンクリートが「自己再生する仕組み」です。これは材料を混ぜる際にセメントなどを特殊なカプセルなどに入れ、コンクリート化しないまま、建造物に流し込みます。徐々に雨などでひびが入ったときに、しみこむ水分と反応させ、新しいコンクリートを生成し、ヒビを埋めてしまうという発想です。これは現在東京大学で研究を進めているようです。実用化すれば、耐用年数を延ばすことができる画期的な技術です。

二つ目は材料を混ぜる際に「海水を利用する技術」です。これまでは真水を使わなければならないというのが常識でした。それは、鉄筋と併用することが多いため、海水を使うと鉄筋がさびて、強度が将来的に落ちてしまうからです。

もともと、海水で材料を混ぜると強度が上がることは知られていたのですが、鉄筋の使用は常識で、それを覆す発想はなかったのです。

鉄筋が腐食するのなら、現在では、カーボンファイバー製の芯を用いることもできます。また、古代ローマ建築のようにコンクリート自体の強度が高ければ、鉄筋を使用する必要もありません。

そして、防波堤のようにもともと海水に接している建造物では、海水を用いる技術の方が作成時もその後のメンテナンスも行いやすいはずです。これまでの製法では再利用が難しかった沿岸部のがれきは海水で混ぜる製法であれば、材料として再利用することが出来、今後の建造物に大いに役立てることができます。

基礎研究の重要性と発想の転換

技術の進歩は右肩上がりのきれいな直線を描くように起こるわけではありません。ある技術を使い続けているうちに、問題が発生し、その問題解決にさまざまな対処方法が検討されます。対処療法で済んでいるうちは、抜本的な解決策は出てきにくく、問題が深刻になるにつれて、新しい発想が生まれ、あるときを境に画期的な新技術が登場するのです。

科学は進化し続けます。これまでは物質的な豊かさが満たされれば、それ以上の発展は必要ないと考える向きもあったと思います。しかし、技術の進化はエネルギー使用を抑えたり、無駄をなくしたりと我々の身近にある資源を有効活用するうえでもっと勧めなければなりません。進化というとこれまでにない技術などと考えてしまいがちですが、コンクリートのように基礎的な分野で新たな進化が生み出されるとロスのない社会が構築されやすくなると思います。

21世紀を担う皆さんはぜひ、これまで常識だと思われていたことを大胆な発想で再試行する習慣をつけてほしいと思います。

3月下旬にイベント実施決定!

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