第15回 東大入試《理科》問題の傾向&対策 物理

東大研究室

物理

2011年度までの出題傾向

大問3題の出題、試験時間75分(2科目で150分)、罫線のみの解答用紙、すべて記述式、といった形式的な面は毎年同じである。

また、入試における東大の意思ポリシーといった内容的な面でも毎年共通したものがある。具体的には、東大の入試物理の一貫した傾向や特徴として、次の①〜③が挙げられる。

① 受験生にはあまり馴染みのない事項が出題され、その場で考えさせる傾向が強い。ただし、このような場合でも、問題文中に説明や誘導が与えられていて、これらを理解した上で物理的な考察によって解答できるようになっている。

ダイオードを扱った2011年の第2問がこの典型例である。

② 物理法則や公式を単に暗記しているかどうかではなく、物理法則についての正しい理解、および法則や公式を与えられた現象に的確に用いることができるかどうかの能力、言い換えれば「物理の真の実力(今後、大学で物理を学び、物理を研究する上で真に必要とされる能力)」が試される。

③ 目的を定めた計算を遂行できるかといった数学的能力、2・3行程度の論述力、グラフの描図など、といった総合的な力も試される。

客観的なデータとしては、今年(2011年)の春に収集した東大の復元答案のデータ(106名分)がある。これによると、得点開示請求した84名のうちの合格者39名の平均点は、60点満点で44.5点(得点率74.1%)であり、不合格者45名の平均点は33.0点(得点率55.0%)であった。

ここ何年か、徐々に易化しているという傾向があるとは言え、合格者の平均得点率74.1%というのはかなり高い数字である。数字だけを見ると、越えるべきハードルは高いように感じるが、この数字を恐れることなく、70%以上の得点を目指すという強い気持ちが大切である。

2012年度入試に向けての対策

入試対策としては、当然、上記したことを十分に踏まえた上での学習が必要となる。

まず、何より強調したいことは、東大入試では「物理的考察力̶自分で物理を考える力」を身につけていることが何より大切であるということである。そのためには、むやみに多くの問題をこなすのではなく、標準的な良問にじっくり取り組み、「なぜ、そのように考えるのか」、「なぜ、そのような解法を用いるのか」ということを意識して考え、納得しながら勉強することが大切である。

特に、問題ごとの解法のパターンを覚えれば何とかなるだろうという考えは、この際、捨てるべきである。

次に、具体的な合格答案作成のポイントとして、以下のことに注意しよう。

① 大問のはじめにある基本問題でミスしないこと。平均点が高めになるのは、基本問題が少なからず出題されることも原因の一つである。従って、ここでのミスは致命傷になりかねず、絶対に許されない。

② 問題の難易度を見極めて、解ける問題を確実に解くこと。本年度の第2問のような解きにくい問題は思い切って切り捨て、他の問題に集中するなどの決断も必要である。前述した復元答案106名分を代ゼミの採点基準で採点した結果は、平均点において、第1問が10.5点(得点率52.5%)、第2問が6.6点(得点率33%)、第3問が14.0点(70%)である。

これを見ると、大問ごとの出来・不出来に大きな差があることが分かる。従って、どの問題を切り捨て、どの問題に集中するかといった時間配分を含めた全体的な戦略と決断が重要となる。

③ 少しでも部分点を得る努力をすること。東大のような途中経過記述式の試験では、たとえ完答できなくても部分点がもらえる。そのためには、解答のポイントとなる途中の式や考え方を明示し、ここまでは分かっている、ということを採点者にアピールする答案作りが大切である。

SAPIX YOZEMI GROUP「2011-2012 winter東大合格プロジェクト」より転載

次回は、「東大入試《理科》問題の傾向&対策 化学」を掲載予定です。

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