第10回 東大合格に必要な学力とは?〈現代文〉

東大研究室

現代文

東大が入試の現代文で求めているのは、けっして特殊な学力ではない。極端に難しい文章を読ませたり、何を答えたらいいか見当もつかないような難問を解かせたりということは、東大現代文においてはほとんど見られない。

標準的な学力の持ち主であれば本文の内容は十分に読みとれる、そういう文章が出題される場合が多い。文章量も他の国公立大の入試問題と比べて、むしろ短めといってもいいくらいである。

一見すると、学力の高い受験生がしのぎを削る東大入試において、これではたして差がつくのだろうか?という印象を与えかねないほど、オーソドックスな出題がなされている。では、どこで点差がつくのか?

第一の条件

第一のポイントは「記述力」である。東大の国語の特徴は「解答欄が狭い」こと。

本文の重要な表現をそのまま使って記述解をまとめようとすると、すぐに解答欄をはみ出してしまうケースが少なくない。つまり、ここで言う「記述力」とは、読みとった内容をこなれた自分のことばで簡潔・的確にまとめる力、ということになる。

東大の場合、現代文では1問を除いて約60字前後で解答をまとめることが求められている。ムダのない、すっきりとした記述答案を作成すること。これが東大入試を突破するための第一の条件である。

そもそも東大は、なぜこのような問題作りをしているのだろうか。おそらくその根底にあるのは、「ほんとうにわかっている人間は、その理解を自分の言葉で簡潔に表現できるはずだ」という考え方である。東大が求めているのは「だいたいわかる」という漠然とした理解力ではなく、文章を正確に理解し、なおかつ、その理解を自分の言葉で的確に示すことのできる表現力なのである。

「ほんとうにわかっている人間は、自分がわかっていることを他人にわからせることができるはずだ」。東大の現代文の問題からは、そういうメッセージが読みとれる。

第二の条件

そして「文章を正確に理解する」ためには、本文に対して「ミクロの読み」と「マクロの読み」を同時に行う必要がある。これが東大入試を突破するための第二の条件である。

ミクロの読み

まず「ミクロの読み」について説明しよう。これは、細部をゆるがせにしない緻密な読みを行うということである。

本文の一文字一文字を正確にたどり、なぜここでこの言葉が用いられているのか、文章を書く側の立場からその表現意図を正確に押さえる「精読」がそこでは求められる。ていねいに論理展開をたどり、細部の表現を味読する「微視的」な読み方が必要なのである。

マクロの読み

もうひとつは「マクロの読み」である。細部にのみとらわれることなく、文章全体の大きな流れ、いわゆる文脈を踏まえて本文を理解する「巨視的」な読解が、ここでは求められる。

東大の設問形式のほとんどは、本文に引かれた短い傍線部にもとづいて、「どういうことか」と傍線部を説明させる問題と、「なぜか」と傍線部の理由を説明させる問題である。

一見すると、傍線部だけを説明させる問題に見えるが、実は本文の重要部を短い表現で示した部分に傍線が引かれていることが多い。つまり、その前後の文脈理解を答に反映させないと不十分な説明になってしまう場合が多いのである。

言うなれば、東大入試を突破するには「虫の視点」から文章を緻密に読みとる姿勢と、「鳥の視点」から文章の全体像を読みとる姿勢の、両方をもつことが大切なのである。そして、これは東大入試にとどまらず、広く文章を理解するために欠かせない姿勢ということができる。

求められる力

東大の現代文では、1)細部をゆるがせにしない緻密な読解力2)全体の大きな流れを押さえる文脈把握力、の二点を意識するとともに、その読みの理解を正確に伝える、3)簡潔、的確な表現力を磨きたい。

そのためには、つねに「読むこと」と「書くこと」を有機的にリンクさせる学習法が効果的である。現代文の問題演習では、最後に必ず本文の要約を行う(東大を意識するならば、制限字数は120字が望ましい)、記述解作成の際には東大の解答用紙を意識して、表現力を鍛える、添削指導を受けたら、アドバイスに即して再度、記述解を作成するなどという意欲的な学習を行いたい。

質の高い受信力と発信力の錬成に努めること。それが東大現代文学習の要諦である。

SAPIX YOZEMI GROUP「2011 spring東大合格プロジェクト」より転載

次回は、「東大合格に必要な学力とは?〈古文・漢文〉」を掲載予定です。

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