第4回 2011年度(前期)国語概評〈古文・漢文〉

東大研究室

国語 概評

出題分析・設問別講評

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合格アドバイス〈古文〉

東大古文の出典は、近年では説話と物語が中心になっている。06年度『堤中納言物語』(平安時代・作り物語)、07年度『続古事談』(鎌倉時代・説話)、08年度『古本説話集』(平安時代・説話)、09年度『うつほ物語』(平安時代・作り物語)、10年度『古今著聞集』(鎌倉時代・説話)。

本年度も鎌倉時代の説話『十訓抄』からの出題であったが、説話そのものではなく、各説話群に添えられた序文の一節がとりあげられた。物語のようなストーリーの展開があるわけではなく、各段落の内容を的確につかんで論の展開を追う「評論」の読解に近いものとなった。

ただ、設問構成自体は例年通りの極めてオーソドックスな出題で、「現代語訳」と「理由・内容説明」の二種類のみ。特に近年では「現代語訳」の出題が目立っている。

解答作成のポイント

解答作成のポイントとして、
① 基本単語・文法を正しく踏まえて訳出する。
② 指定された条件に合わせる(省略語句の補足や指示語の具体化)。
③ 場合によっては①をもとに、現代語としておかしくないように意訳する(ただし①は正しく踏まえていなければならない)。

ということになるが、本年度の現代語訳・説明問題の特徴として、傍線部分に「君」「忠」「世の末」「いさむ」「機嫌」「思ひ合はす」「腹黒き心」など、知識だけでは対応できない語が散見されたことがあげられよう。筆者の主張を踏まえて適切な訳語を工夫しなければならないところであった。

例えば「機嫌」を現代語の意味そのままに解してしまうと、文脈を取り違えてしまいかねない。また、指示内容を明らかにして現代語訳させる設問でも、本文の主旨をしっかりおさえた上で文脈を追わないと完答は難しい。

東大古文の対策

東大古文の対策としては、基本単語・文法・語法などの基礎をしっかり固める学習を反復して行うことが何より先決。

4〜500程度の基本単語の暗記は無論だが、文法は助動詞や敬語を中心に、口語訳と結びつくような覚え方をすること。そうした学習を経て、現代語訳問題では、まず直訳文を正しく書けるようにし、さらに文脈から言葉を補足した訳にしてみること。

これらの基礎力は、当然のことながら内容説明問題の記述にも活かされる。内容説明では、解答文は繰り返し表現を避け、できるだけ簡潔で無駄のない表現を心がけるようにすることが大切。

そのためにも、現代語の語彙をできるだけ多く身につけておくことが肝要である。

合格アドバイス〈漢文〉

東大の漢文問題は文科・理科とも同一の文章が用いられ、設問数が文科が5問であるのに対して、理科は4問と1問少ない。両者の違いは、文科の設問(一)が理科にはないというところにしかなく、漢文に関しては、理科志望の受験生も文科志望の受験生同様の学習が必要といえる。

2006年度から文科・理科とも共通の文章が用いられることによって、設問自体はやさしくなったといえるが、2010年度、2011年度とさらに平易化が進んだという印象をもつ。

このような易化傾向が来年度以降も続くかということに関しては確かなことはいえないが、しっかりとした学習を積んでおけば、漢文で高得点を取ることは十分可能だと言うことはできる。

七言古詩からの出題

本年度は白居易の七言古詩からの出題であった。詩が単独で出題されたのは、2001年に文科で出題されて以来、久々のことである。しかし、とりあげられた詩自体はとても平易なものであり、理解しやすいものであった。

設問は空欄補充問題以外は現代語訳問題と説明問題であり、本文の理解をいかにわかりやすく簡潔に表現できるかという記述力・表現力が問われる問題だったといえる。

設問(一)の空欄補充問題は文科のみの問題であるが、これが全設問中もっとも難しかった。しかし、設問文の「前四字と後三字が対応関係にある」という記述が解答を導くためのヒントとなっていた。この句の主語は雁であり、大雪の中で川の水は凍っているという周囲の状況を考えれば、自ずと空欄は埋まるだろう。

設問(二)の現代語訳問題は「」の訳がポイントとなる。第七句との繫がりを踏まえ、子どもが捕らえた雁をどういう状態で売っていたかを考えれば、「生」の訳は「生きたまま」がよいとわかるだろう。

設問(三)の心情把握問題は、作者も雁も同じ「」というよそ者であることを考える。作者は左遷された罪人(つみびと)であり、雁も捕らわれの身であることを考えると、両者の関係は自ずから明らかになる。それを簡潔にまとめればよい。冗長な記述では減点されるだろう。

設問(四)の説明問題では、作者が捕らわれた雁を子どもから買って解放してあげたことをわかりやすく述べればよい。「贖(あがな)ふ」は買い求めるという意味で、罪ほろぼしをするという意味ではない。

設問(五)の説明問題は最後の二句を現代語訳してうまくまとめれば答えになる。食料や武器に困窮した兵士が雁を捕まえて食料にしたり、その羽を矢羽にするということをここでは指しているのである。

SAPIX YOZEMI GROUP「2011 summer東大合格プロジェクト」より転載

次回は、『2011年度(前期)数学概評』を掲載予定です。

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